23●商品の差別化/まず競合を知る

また、どんな分野(商品価値・市場など)から段階的に始めるかという意味でもあります。
たとえば商品は「緑茶」、商品テーマは「最終商品」と設定します。

緑茶は旨味成分が決め手ですから、通常はここを強化しなくてはならないと考えてしまいます。しかし、旨み成分を追究し過ぎると、専門家には分かってもらえても一般の消費者にはその違いが分からなかったりします。味は好みやその日の体調に左右される不安定なものだからです。そんな伝わりにくい所に力を傾けていたのでは、コスト高を招くだけ。同じ業界の人は同じ価値を追究してしまうという原理があります。これが既成概念です。

弱者は、誰に買ってもらうのかを絞り込み、差別化に力を傾けるべきです。
つまり、本格的な緑茶の味が分からない人にも買ってもらう工夫が必要なのです。

では、味以外にどんな価値があるのでしょう?
基準となる商品価値は以下の4点が挙げられます。

■事実価値/必需性、品質の良さ、価格設定、安定した供給など。
■機能価値/使い勝手、機能の優位性、性能が安定しているなど。
■情緒価値/品名・デザイン・パッケージが印象的、おいしそう、オシャレなど。
■社会価値/文化性や知名度、ブランド力や流行・時流に乗っているなど。

これを見て、「では、今ブームになっている無農薬という部分を強みにしよう」と決めてしまうのは早すぎます。確かに無農薬というのは健康・安全志向の時流に乗っている「社会価値」ですが、シェアを占めている競合も同じことをやっていたとしたら、太刀打ちできません。

自分たちの商品価値を見直すと同時に、競合の商品価値も上記の項目と照らし合わせて分析し、競合が力を入れている部分と手薄になっている部分を明らかにします。その上で、同じ価値で競合を上回る力を付けるのか、それとも全く逆の路線で価値を創造していくのかを検討するのです。これが戦略キャンパスに則った商品の差別化です。

商品の中身は同じでも、消費者の志向に合わせてパッケージを変えるだけで新たな価値が生まれる場合も多々あります。例えば、スーパーに置く日用品として提供する場合は親しみやすいデザインに、デパートに置く贈答品として提供する場合は高級感あるデザインに、というように、売り場とそこに来る顧客に合わせて表現を工夫することで訴求力が変わってきます。競合のパッケージが現代の消費者のライフスタイルや売り場にそぐわないと判断したら、そこの「情緒価値」に力を入れてパッケージを開発するというやり方もあるのです。

上記は最終商品の例でしたが、技術商品の場合も同じことが言えます。
技術商品でありがちなのが、自分たちの技術はいかに優れているか「機能価値」を力説する売り方です。同じ産業に関わっているのだから、優れた部分を言えば、当然クライアントも理解してくれるだろうと思ったら大間違い。自分たちは分かっているからいいのですが、クライアントは、その技術が自分たちにどう役立つのかよく理解できていなかったりします。「この技術は、御社のこんな問題をこんな風に解決しますよ」と、もっとクライアントの立場になって問題解決する「事実価値」を高めた売り方をしなければなりません。

また、「工業製品だから機能さえ優れていればいい」という考えはもはや通用しなくなりました。とても洗練されたデザインの業務用印刷機がヒットしたという例があります。「印刷工場で使う印刷機は、性能が優れていれば多少見た目は悪くてもしょうがない。その分コストが安い方がいい」というのは昔の話。今は、「印刷機の性能がいいのは当たり前。だったら、デザインの優れた印刷機の方が、社員が楽しく働ける」と社員のモチベーションや職場環境も重視するようになっています。「機能価値」から「情緒価値」へ発想を転換することで、こんな新たな顧客獲得のチャンスが生まれるのです。

23●商品の差別化/まず競合を知る



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Posted by モチヅキ セイジ. at 2010年07月04日08:21

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