私の会社には、一本の不思議なパキラがいます。
この観葉植物は、以前、お客さんの会社の窓際で、植木鉢にひっそりと植えられていました。そして私が行くと、いつも寂しそうに話しかけてきたのです。「こんにちは。また来てくれたの。いつも私に気づいてくれるね」。
あまりにも私に話しかけてくるので、ずうずうしいかなと思いながら勇気を振りしぼって、「よかったらこのパキラ、もらえませんか?」と聞いてみました。すると「誰もぜんぜん世話をしないし、かわいそうだから、よかったらどうぞ、どうぞ」という返事。
さっそく事務所に持って帰り、水をあげました。すると、植木鉢の下から真っ黒い水が出てくるのです。もう土を洗うつもりで、じゃんじゃん水を流しました。するとヤニのような水が、次から次へと出てきます。水がキレイになり出した頃から、パキラがすっきりしたように感じました。そしてその日から、すくすくと伸び始めました。
大きくなってきたので、植木鉢をひとまわり大きく、そしてちょっとオシャレなものに代えました。そしたらもっとすくすく伸び始めました。何年もの間、四〇センチくらいだったパキラが、一年もしないうちに一メートルをゆうに超え、丸坊主だった枝は葉でふさふさになり、別パキラになってしまいました。
「ここはとっても居心地がいいんだよ」と言ってくれているようで、なんかうれしい。大怪獣になったパキラは、私とこの会社が好きなようです。
人も植物も成長する場づくりのススメ
風通しが良く、光に満ちて明るい。電磁波やアスベストなど体に害を及ぼすものがない。心安らぐ静かな音楽が流れている。活き活き能力を発揮するための設備や配慮がされている…そんな、人が気持ちよく過ごせる場所は、植物も動物も、みんな元気になります。どんな優秀な人でも、砂漠のまん中にポツンと置かれたら、どうしようもありません。成長するには、それなりの場づくりが大切です。