クリスマスをX’masと書くのは間違いです。この「’」(アポストロフィー)は、省略や所有格につける記号として使われるもの。Xはキリスト(Christ)のギリシャ語の頭文字であるXを取ったもので、省略ではない。だからXに「’」を付けるのは間違いである、ということです。確かに、どの辞書を見ても「’」は付いていません。
ところがクリスマス商戦になると、あちこちの広告でこの「X’mas」を見かけます。大手デパートのクリスマス広告にも、やっぱり「’」が付いています。それが気になって仕方がありませんでした。特に、自分が広告の仕事に関わるようになってからは黙っていられなくなり、ある時、先輩にこの話をしたのです。すると「世間がみんな付けているんだし、カッコいいから、いいんじゃないか」と言われました。
「え〜っ、そうなのか!?」とはじめは釈然としませんでした。「間違っているんだから、そんな使い方をしてはいけないんじゃないの」。
でも、よく見ると確かに、「Xmas」よりアクセントが利いてカッコいい。これは既に英文法から離れて、クリスマスを象徴する記号として認識されているのだと思いました。
間違っていても、それなりに築いてきた文化というものもあります。正論をかざして正否ばかりを問うのではなく、かといって妥協でもなく、そうやって変わっていくことも時代の流れのひとつなんだ、と受け入れることも意味があるのかもしれないと思いました。
「文化とは」を考えてみることのススメ
英語のキャッチコピーを考えたりすると、英語を知っている人から「間違いではないけれど、そんな使い方はしない」などと言われることがあります。しかし、日本語でも「通常はそんな使い方はしない」コピーがあふれていて、それがインパクトだったりします。常識や慣例は大切にする。しかし、それを超えたところに新しい文化が生まれる、という気持ちも忘れたくありません。