以前、書道家のおばあさんを尋ねたことがあります。
プロの書道家とは?みたいな話を聞きたくて
時間をとっていただきました。
勝手に「プロとはこうだ!」みたいな話を聞けると思って
意気込んで伺いました。
しかし出てこられたその方は、
ほんとに普通のおばあさんというか、
逆に足が弱っていて、杖をつき畳の上にはすわれない
弱々しい方でした。
あれ?みたいなこちらの思い込みの中、
「書道家としてのプロとは!みたいなお話を…」
などとなんとも単刀直入な色気の無い聞き方をしました。
すると、「う〜ん、プロっていわれても…」
困ったような顔をされて
「私は、体が弱かったから他にできる事が無かったので
時間のあるときに書いていただけだから…」
という事なのです。
はれ〜?!みたいな少し期待はずれ感で
わずかに時間が過ぎたのです。
すると、しばらくの沈黙の後、
「プロとは、みたいな難しい話はできないけど、
しいて言えば……、
自分の書いた書をカッターで切ったとしたら、
そこから自分の血が流れてくるような書が書きたい。
ということぐらいかな?」
と言うことなのです。
!!!!!!自分はいったいプロの何にこだわって、
どんな話が聞きたかったのだろう!
愕然と感動でいっぱいになった僕は、
その後、何を話したか何も憶えていません。
はずかしさや、自分の小ささや、思い込みや…
僕を、何かひとつ前進さてくれた時間でした。